恋愛至上主義の女

暇を持て余した女子大生が好奇心で潜り込んだ世界の備忘録。

最後のアオハル

 

 

 

 

 

彼の為なら死んでもいい。

 

 

 

それくらい本気で愛した男がいた。

15歳で出会ってから、

私は彼に振り回され続けた。

世界の中心は彼で、

会えなくなっても彼は私の心の中に住み続けた。

他の誰かと付き合っていても、

奥底で眠っている彼の存在が時々顔を出して、

その度にSNSを漁った。

 

 

 

 

 

 

私は、本当は分かっていた。

彼とは一緒にいられないことも、

彼といても幸せになれないことも、

彼と私は身体でしか繋がれないことも、

全部、ぜんぶ、分かっていた。

 

 

 

 

それでも、私は彼しか愛せなかった。

他の男にどれだけ優しくされても、

他の男がどれだけお金を使ってくれても、

彼以外の男は気持ち悪くて、ジャガイモだった。

 

 

 

 

彼以外の男になんて興味を持つはずがなかった。

持てるわけがなかった。

 

 

はずだった。

 

 

 

  

 

 

 

 

同じ学科の男なんて絶対にありえないと見下していたのに、

ましてや年下で、ほぼ童貞で、外見だって平均程度の男に、 

その気にさせられて、本気になって、振り回されて、

挙げ句の果てに捨てられた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

どう考えたって、冷静になればなるほど、

ありえない、おかしい、意味が分からない。

 

 

 

 

 

自慢じゃないが、

どこに行っても褒められる顔面に産んでもらった。

体格にも恵まれてモデル並みに華奢だし、

肌と髪だって一般的に見ても綺麗だし、

要領よく勉強だってそれなりにこなしてきたし、

大手優良企業から内定も貰っているし、

性にもそこそこ積極的で、男を立てることだってできる。

ほんの少し人よりメンヘラで、わがままかもしれないけれど

私が笑えば、みんな大抵のことは許してくれる。

 

 

 

 

なのに、この私が、

1歳年下の、近似したら童貞に、

その気になって、本気になって、未来を約束したのに、

逃げられている。

 

 

 

 

 

 

全くもって理解が追いつかないし、許しがたいことで、

到底受け入れられるものではないのだけれど、

これは現実であり、事実として彼は私を捨てた。

 

 

 

 

 

 

現実から目を逸らそうにも、

毎日同じ部屋で生活しなければいけない。

今となっては同じ部屋になったことを恨むし、

もはや同じ研究室になんてならなければ出逢わずに済んだ。

 

 

 

 

 

声を聞くだけで泣きそうになって、

後ろ姿を眺めては苦しくなって、

あからさまに避けないとやってられなくて、

すれ違う度に目を逸らして、

ひたすら黙って日々をやり過ごしている。

 

 

 

 

見るからに元気がなくて、今にも消えてなくなりそうで、

死んでしまいたくて仕方ない。

 

 

 

こんな私を見て、彼は今何を感じているのだろう。

きっと何も感じていないに違いない。

 

 

 

 

 

 

夏休みが始まる前に

研究室では今まで通り普通でいたい、と言った彼。

学校が再開してから、未だ一言も話していない。

 

 

 

 

 

彼は、私からの大量の着信履歴やSNSの鬼更新などの

メンヘラ活動に呆れて愛想尽かしてしまって

友達でいるのさえ嫌になったのだろうか。

 

 

 

 

今は誰とも付き合うつもりはないから。

本気だった、それは嘘ではない、けど1人になりたい。

 

 

 

あの言葉は 何だったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せ絶頂だった、どこまでも昇り坂だと感じたあの日

突然、元カノの手によって投げ込まれた 槍 は、

見事に命中し私と彼の関係は壊れた。

 

元カノがいれた亀裂は広がる一方で、

2ヶ月かけて粉々になった。

 

 

 

 

 

 

 

大した男ではないことも

もっといい男がたくさんいることも

振り回される価値もなければ

時間の無駄だってことも

全部、せんぶ、わかっている。

 

 

 

 

 

それでも、どうしても忘れられないくらい、

彼との時間は私にとって 青春 だった、

私の人生最後の アオハル だった。

 

 

  

 

 

 

彼と過ごした2週間を、私は一生忘れないだろう。

毎日、学校でも家でも一緒にいて、

笑いが絶えなくて、何をしていても楽しくて、

初めてのデートでみた映画も、

大っ嫌いな雨が降る中で出かけたあの日も、

2人で飲んだお酒の味も、彼の家の匂いも、

私は一生忘れることはない、忘れられるわけがない。

 

  

 

 

 

でも彼はきっともう

私の香水の匂いも、

私との交わした数々の約束も、 

私と行ったラーメン屋さんの味も、

全て忘れてしまったのだろう。

 

 

  

 

 

せめて最後くらいは、いい女でありたかった。

わがまま言わず、涼しい顔して、バイバイって言っておけば良かった。

 

せめてちゃんと、お礼とお別れを言って終わらせたい

と今更思っても、もうそれすらもきっと叶わないし、

私はいざ彼を目の前にしたら、

またワガママを言って困らせてしまうだろう。

 

 

 

 

 

だから私は、明日も、明後日も、

毎日あからさまに彼を避けながら、

今日という日をなんとかやり過ごすのだろう。

 

彼が、 ごめんね と言って戻ってくるのを期待しながら。

 

 

 

 

 

 

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