恋愛至上主義の女

暇を持て余した女子大生が好奇心で潜り込んだ世界の備忘録。

8年愛した男が堕ちた瞬間

 

 

 

 

 

「お前と関わるリスクに対してメリットがない。」

そう突き放されてから半年。

 

 

「あの時は悪かった。」

と彼が謝ってきた。

 

 

 

 

彼に切り捨てられたあの日、

自分に立てた誓いを守り抜き

彼との駆け引きに勝った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半年前のある日、私は彼と会う約束をしていた。

 

 

けれども、2週間前になってそれは流れた。

約束が流れるのはいつものことで

前回も前々回もキャンセルを食らっていた。

 

今回の理由は、

急に彼女が来ることになった、から。

 

あぁ、でた、あのメンヘラ彼女ね。

 

 

そのメンヘラ彼女のおかげで

連絡が途切れたことも

約束がキャンセルされたことも

今まで何度もあった。

 

 

 

今度は3ヶ月ぶりに会う約束をキャンセルされた。

 

彼女持ちの男を忘れられない私が悪いのか、、。

 

 

 

 

 

キャンセルじゃなくてリスケにしない?

と提案したら渋られた。

 

 

ああ、めんどくさくなってきてるんだな。

言われなくても分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昔からそうだった。

彼は私にだけ負の感情を剥き出しにする。

まるで繕い方を知らない子供のように。

ときに笑顔で私の心をめがけて槍を放つ。

 

 

 

 

彼が発するマイナスな言葉に、空気に、

私はいつも傷つけられていて、また慣れてもいった。

多少の事では動じなくなった。

 

 

 

彼を知る人は、

彼の私への態度を見て、本気で嫌なんだろうと

(他の子にはそんな態度をとらないので深刻だと思われる)

私が関わるのを止めたけれども

私は分かっていた。

 

しばらくしたら

彼は何事もなかったかのように接してくることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも今回はいつもより酷かった。

 

「もう、こういう関係はやめよう」

「お前、すぐ晒すから怖い」

「おれにメリットがなさすぎる」

 

そう言って切り捨てられた。

今回ばかりはどんなに縋っても無駄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きだった、大好きだった、

彼の特別な存在になりたかった。

彼に必要とされたくて

彼を支えたくて、彼のために何かしたかった。

 

 

 

でも残念ながら

マネージャー になっても

性的欲求を満たしてくれる女 になっても

言うことを聞く従順な女 になっても

私は彼の特別にはなれなかった。

 

 

 

LINEのメッセージで切り捨てられる

その程度の女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7年前を思い出した。

 

 

「俺と連絡とって何の意味があるの?

どうせ遠くへ引っ越すのに?

どうせ会うこともないのにメールする意味ある?」

 

私が他県へ転校するとき

仮にもクラスメイトでマネージャーだった私に

彼が放った言葉。

この言葉に私は5年間縛られて

思い出す度会いたい感情でいっぱいになるのに

連絡できずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

再び出会って1年半、

彼はまた私の人生から消えようとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

震える手脚をなんとか落ち着かせ

家に帰って、友達と電話し、

マネージャーの先輩と電話して、ここでやっと泣いた。

 

 

 

この1年半、

どれだけ傷つけられても泣かなかった私が

高校生の時以来、初めて彼の言葉で泣いた。

 

 

 

 

 

マネージャーの先輩は彼と私のことをよく知っていた。

 

 

「やることだけはしっかりやってなにそれ」

「いい加減ひどすぎる」

「あの子の生き方っていうかやり方?寂しい人だなと思う。なんかかわいそうだわ、なんであんなんなんだろう」

 

 

 

 

先輩の言葉は私を救ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

可哀想な男。

どうしようもない男。

しかたのない男。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はきっとまたそのうち

私が連絡してくると高を括っているはずだ。

 

一旦死んだように静かになっても

またゾンビのように復活して

俺に構ってくれと連絡してくる。

そう思っているはず、間違いなく。

 

 

 

 

でもそれではまた同じ事の繰り返しだ。

だから私はこの時誓った。

 

 

今後自分からは連絡しない、

彼が自ら連絡してくるまでは。

LINEはもちろんInstagramのいいねやコメント

ストーリーへの返信も絶対に送らない。と。

 

 

 

自信は僅かだがあった。

距離を置けば彼は私が欲しくなる。

彼は自分のことを好きな女を

そう簡単に手放したりはしない。

 

 

だから2.3ヶ月置いて

私から連絡すればきっと、

彼は何事もなかったかのように私を受け入れる。

 

 

 

 

 

 

だけど私は、私が欲しいのは

そんな目先の脆い関係ではない。

 

 

 

私の人生にも彼の人生にも

2人の関係を必要なものとして定置させたかった。

 

私たちは決して離れることができない、と

お互いに惹かれ合う運命なのだ、と

彼に認識させたかった。

 

 

 

だから、彼から連絡が来るまでは

絶対にこちらからはアクションを起こさないと

心に、自分に、強く誓った。

 

 

 

 

 

それからすぐのことだった。

滅多に投稿しない彼が

Instagramのストーリーを頻繁に更新するようになった。

 

それも後輩の女の子の写真だったり

まるで私を挑発しているような

昔の私だったらすぐコメントを残してた

そんな内容だった。

 

 

煽られている、そう感じた。

煽られて煽られて煽られて、それでも耐えた。

 

 

今の私にできることは、

彼の挑発に絶対に乗らないこと、だけだった。

 

私自身のInstagramの更新も控えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空白の時間も半年を迎える頃だった。

 

 

 

12月に入って中間テスト前日、

徹夜で勉強していた私の元に

Instagramの通知が2件入った。

 

 

「今年は卒業できそう?」

「あ、間違えた来年かww」

 

彼からだった。

 

 

 

2時間前にあげた

ストローをさしたレッドブルの写真の

ストーリーへのメッセージだった。

 

 

 

心臓が破裂するかと思った。

ついに、向こうから、連絡が来た。

 

 

動揺しまくり、テスト勉強どころじゃない精神状態を

必死に隠し、落ち着かせ、返信した。

 

 

 

 

 

繰り広げられたのは他愛もない会話だった。

 

 

 

 

 

 

それでも最後の方に彼が

 

「まあまたどこかで会おう」

 

と言ったことに確かな感触を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから年は明け、

もうすぐお正月休みも終わるという頃だった。

 

 

 

2度寝から目覚めた私はiPhoneを開くと

《新着メッセージがあります。》

LINEの通知が1件入っていた。

 

LINEを開くとそこには

半年ぶりに見る彼のアイコンと

緑の1という数字があった。

 

 

「ねーねー」「おい」などといった

内容を明かさないメッセージ。

彼らしい一通に懐かしさを感じた。

 

 

 

要件は「Tinderでイケメンを探すな」だった。

 

どうやら昔マッチした私達の高校の先輩で、

彼の親友の兄とたまたま会って

私とマッチしてやり取りした話を聞いたらしい。

 

 

『ほんとに探してるわけないじゃんw』

と返すと

 

「ちゃんとしてください😢」

という彼に

 

『うん、会ったりしてないよ、大丈夫』

 

と平気で嘘をついた。

(Tinderで出会った男を題材にブログを書く事が趣味だ、

なんて死んでも言えないからね。)

 

 

 

 

 

 

 

すると彼は急に

「てかそろそろ会うか笑笑」

と送ってきた。

 

 

 

ここで以前の私なら

『え?会ってくれるの?気が向いたの?嬉しい!』

くらいの勢いで尻尾を振りまくりのLINEを送っていたが

半年間で素っ気なくすることに慣れた私は

『うん!』とだけ返した。

 

 

すると彼は 

 

「あれ、嫌だった??」

 

と動揺を見せ

 

「おれさー、一応、お前に昔酷いこと言ったの、割と後悔してて、謝りたいんだよね」

 

と言ってきた。

 

 

 

 

新年早々、雪が降るんじゃないかというくらい

衝撃的な発言だった。

プライドの塊の彼が謝りたいだなんて。

 

 

 

 

そこはあえて深追いせず

予定をすり合わせた、が、合わない。

 

昔はあんなに簡単に決まったのに何故?

と思ったが、よく考えたらあの頃は

私が無理をしてでも予定を彼に合わせていたんだと気づいた。

 

 

 

 

なかなか合わない予定にめんどくさくなってしまった私は

 

「もういいや、とりあえず話だけ電話で聞くよ」

 

と自ら、会う可能性が減る選択をした。

 

 

話す内容をまとめたいと言う彼から電話がかかってきたのは、それから1時間半後のことだった。

 

 

 

 

 

 

結果的に2時間近く話していたのだが

(勿論半分くらいは雑談)

彼の言い分はこうだった。

 

 

 

 

 

近すぎると突き放しなくなる性格だから、仲良くなりすぎた故に突き放してしまった。加減が分からず酷い言い方をして傷つけてしまった。申し訳ないと思っていた。もう会うこともないからいいかとも思ったけど、いつか謝りたいとも思っていた。

普通に高校の時の友達として会えたらベストだとは思うけど今更ハードル高いなと思っている。

でも、他の部員と一緒にでも、2人でも、また仲良くできたらいいなと、会いたいと、俺は思っている。

 

 

 

 

というような内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実はこの電話でのやり取り全て録音していた。

自分で聞き返すのと友達に聞かせるために。

友達はみんな呆れていた、これが謝罪?と。

 

 

 

側から見たら、こんなのは謝罪でもなんでもない。

そう思うだろう。私だってそう思う。

 

 

それでも、彼をよく知ってるが故に

これが彼の精一杯の謝罪だと痛いほどわかった。

 

 

彼の、この困った性格を、私は誰よりも知っている。

もしかしたら歴代の彼女よりも

彼の弱い部分や、ダメな部分を1番近くで見ていた。

たった1年だけだったけど、マネージャーとして。

 

 

そんな彼の弱い部分を知っているから

普段のナルシストな部分も、偉そうな部分も、

虚勢を張って誇張した発言を繰り広げる姿も、

夢を語る姿も、愛しいと思える。

 

 

 

 

高校時代、あんなに喧嘩して

最低最悪な態度をとられてたのだって

マネージャーという近すぎる存在故にだった。

 

 

12月のDMも、ジャブを打って様子を伺っていたらしい。

 

 

時折、私との関係を思い出しては楽しかったなと思ってくれていたらしい。

 

 

 

 

 

会うたびに必ず抱き合っていた私達。

やめとこう?と言いながら毎度流されていた彼。

今となっては、彼が私を抱きたいと思っている。

 

 

 

 

 

 

身体で繋ぎ止めようという作戦が見事に効いていた。

 

 

 

 

まわりが見れば

明らかなヤリたいだけの男の発言だが、

わたしにとっては2年前から始めた作戦と

半年前に始めた作戦の成功を意味していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

8年愛した男が堕ちた瞬間だった。

 

 

私の作戦に、私の身体に、

彼はまんまと堕ちようとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで私はまた新たな誓いを立てた。

 

 

 

彼がこちらを向いたからといって

私はもう昔のように愛を剥き出しにはしない。

 

普段は彼に対して冷たく、無関心を装い、

抱き合っている時だけ、愛を解放しようと思う。

彼が私を頼ってきた時だけ、全力で支えよう。

 

 

 

 

彼が心地よいと思える距離を保ちながら

着実に彼の人生を侵食していきたい。

 

 

 

そしていつか彼が結婚する時に私を選ぶように、

焦らずじっくりと彼の人生に入り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ては、彼が成功する姿を1番側でみるために。

それが8年前から変わらない私の夢だから。

 

 

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手に入れてしまうと興味を失う私でも

彼だけは特別だと。

 

 

次に抱き合った後、

この気持ちが変わらないことを祈ろう。