恋愛至上主義の女

暇を持て余した女子大生が好奇心で潜り込んだ世界の備忘録。

3枚の1円玉から始まる恋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欠陥品の歯車同士が

噛み合って機能することは永遠にあり得ない。

 

 

 

" あそび " を持たない歯車は中々噛み合わず

たとえ噛み合ってもすぐに破損してしまう。

 

 

 

私たちはそんな関係だった。

 

 

 

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高校1年 4月

 

 

 

 

桜の舞う季節、

第一志望だった高校の制服に身を包み

憧れの高校生活を謳歌しようと息巻いていた。

 

 

 

 

 

 

 

いわゆる高校デビューだった。

小中が大学附属校だったことに加え

途中で転校をしていた私は普通の学校生活に憧れていた。

みんな同じ条件でのスタート。

ここではもう転校生ではない。

 

 

 

 

 

 

入学式翌日

そんな意気込みも虚しく、早速やってしまった。

教材代の追加徴収があることを忘れていた。

財布を確認すると、よかった!あっt、、

 

お金はあった、が、細かい小銭がなかった。

まずい、ピッタリ厳守なのに、、。

 

 

 

近くの席の女の子に聞いてもみんな持っていなかった。

でもこんなことで先生に注意を受けるのだけは避けたい。

 

 

 

 

 

仕方ない、隣の席の物静かで地味な子は避け、

斜め後ろの席の男の子に声をかけた。

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、3円持ってない??』

 

 

 

 

 

 

これが彼との最初の会話だった。

今思えばとんでもない出会いなのに

後に、彼に言われる時まで、

私はこの時のことをすっかり忘れていた。

 

それくらい3円を確保することに必死だったわけ。

 

 

 

 

 

 

「んーーーー。あるよ!」

 

 

彼はすぐに確認して、快く貸してくれた。

わたしはお礼を言って、知り合ったばかりの友達と

ほんとよかった~。なんて言いながら集金場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、彼が登校してくるとすぐに

私は1円玉3枚を持って彼の元に向かった。

 

 

 

「おはよう、昨日はありがとう。

 ほんとに助かった。これ返すね。」

 

 

 

私を見て彼は笑った。

 

 

 

「3円くらいいいよ、あげるよ」

 

 

 

顔が赤くなるのがわかるくらい恥ずかしかった。

 

 

 

「いや、でもそういうのはちゃんとしないと、、」

 

 

焦る私を知ってか知らずか、彼はまた笑いながら

 

 

 

 

「じゃあせっかくだし貰っとくわ、律儀なんだね。」

 

 と受け取ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の昼休み

みんなで部活勧誘のビラを見ていた。

運動が苦手で少女漫画が大好きな私は

高校では男子部のマネジャーをすると決めていた。

すると頭の上から声がした。

 

 

 

「マネージャー志望ならバレー部きてよ!」

 

彼だった。 

 

 

 

「バレー部に入るの?」

 

 

「入るってかもう入ってる。

 俺推薦だからさ、先輩に呼ばれて春休み前から練習でてるの。

 とりあえず見学来てよ、俺いるし!」

 

 

「ふーん、バレーかぁ。行ってみようかなぁ、、」

 

 

 

正直、バレーボールは好きじゃなかった。

体育の授業でしかやったことはなかったけど、

痛いし難しいし、苦手だった。

テレビで日本代表戦を観ることさえなかったけれど

せっかく誘ってもらったので行ってみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

放課後、同じクラスで唯一マネージャー志望の子と体育館へ向かった。

既に練習が行われていて、プレーヤー希望の1年生の男の子が何人かいたけれどそこに彼の姿はなく、少し離れたところで先輩に混じってアップをしていた。

 

 

 

 

 

(あぁ、ほんとにもう練習に混ざってるんだ。)

 

 

 

 

 

 

彼が返したボールは綺麗な軌道を描きながらペアの先輩の元に向かい、また先輩が返したボールも同じ軌道を描いて彼の元に届き、また彼が返して、と繰り返されるオーバーパス。

 

 

その動きはとても美しかった。

生まれて初めて、スポーツをする男の子を見て美しいと思った。その感覚は今でも鮮明に思い出せるくらいに衝撃的で、未だに彼以外でスポーツする男の人の姿を見て美しいと感じたことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見惚れてしまって目が離せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてスパイク練習に移ると

和やかなムードは一転して空気が引き締まった。

先ほどまで見せていた笑顔は消え

真剣な眼差しで跳んではスパイクを打っていた。

そんな姿もまた美しかった。

自分の打ったボールを見届けては首を傾げたり頷いたりする姿をみてプロフェッショナルだ、と思った。(語彙力)

私には今のプレーの何が良くて何が悪いか分からないけれど。

 

 

 

 

ほんとはサッカー部やバスケ部などマネージャーがいる王道なスポーツを選ぶつもりだったのに、

バレー部にする、そう決めた。

 

 

 

 

彼のプレーに惹かれた、

いや、彼自身に とてつもなく惹かれていた。

誰かに彼を取られたくないとも思った。

バレー部にマネージャーは何人もいらないだろうし

はやいもの順だろうと思ったら、即決していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは

10代の頃からとても恋愛体質で

いつでも好きな人がいた。

 

 

 

 

 

もちろん入学式の日、

クラスの男の子を見渡してイケメンとそれ以外に分類していた。1番かっこいいと思った男の子は背が高くて目鼻立ちのはっきりした、城田優似の子。でも彼は次の日には坊主になっていた。私は昔から野球部が苦手だったので、残念だなと思いながら、興味は薄れた。

 

 

 

一方で彼はというと、

最初は目に留まらなかったが

よく見てみると、綺麗な白い肌、

切れ長の目に長いまつげ

少し茶色くて柔らかそうな髪の毛

小さな顔に似合わず大きな手に長い指

女の子よりも綺麗な爪。

男の子にしては少し高めの声で発する言葉は

ちゃんと男の子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

好きかもしれない

そう思うのに時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

こうして、

永遠に噛み合うことはないのに

惹かれ合ってしまう歯車は動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてのマッチングアプリ

 

 

 

 

 

 

 

今でこそマッチングアプリ

1つの出会い方のカタチとして

広く普及し定着しつつありますが

まだpairsの会員数が現在の半分

約400万人だった頃のお話です。

 

 

 

 

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遡ること2年半前、

あれは1度目の大学3年の4月。

 

 

 

 

私は失恋をして大切なものを失った喪失感を引きずっていた。

 

 

実際は恋愛としては大したものではなかった。

たった2ヶ月ほどつきあった彼氏に振られた。

ちょうどバレンタイン直前のことだった。

京都に住んでいた彼のお家には2回泊まりに行ったが

キス以上の関係に進むことはなかったし

付き合っていた間も3回しか遊んでない。

振られた理由も、やっぱり遠距離はしんどいとか、

就活が始まり忙しくなるとか、そんな理由。

 

 

ただ、彼と出会ったのは高校2年の時で

彼氏になる前は数少ない仲のいい男の先輩だった。

 

 

“彼氏”と別れたことより、

“先輩”が一人消えたことが喪失感の原因だった。

 

 

 

 

 

失恋には時間薬と男薬

問題は次の『男薬』をいつ飲むか?

早過ぎても効かないし、遅くてもダメ。

あと、飲み過ぎもダメね。

 

 

 

これは 西村しのぶ の サードガール

という漫画の作中に出てくる台詞で

中学生の頃、母親の本棚の本や漫画を

読み漁っていたときに出会った。

お気に入りの言葉だ。

 

 

 

 

 

 

 

この 男薬 を求めて

20歳も半ばを迎える私はpairsをはじめた。

 

 

 

 

会員数はまだ全国で400万人

まともな都市が名古屋しかなく

ユーザーが少ないであろうこの東海圏において

 

20歳 女子大生 彼氏なし

本気で出会いを求める美女

 

が突如マッチングアプリに現れたら?

 

 

 

 

来るは来るは いいね の嵐!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

現場、工場勤務、営業マン、大手企業勤務、医師、自営業

23歳くらいから40過ぎまで

ぶす、ぶす、汚い、禿げ、汚い、ぶす、普通。

 

 

 

 

よりどりみどりとはこういうことを言う。

まさにそんな感じ。(ぶすばっかだけど。)

 

 

 

流れるカードの山を眺めていたとき

一人の男が目に留まった。

 

 

 

プロフィール写真の自撮りは

ナルシスト感が満載だが、まあ盛れていた。

だいぶ髪型と金髪に引っぱられていたと思うが

NEWSの手越祐也を素人にした感じ。

 

 

matome.naver.jp

 

(この柏木由紀とのスクープ記事の写真をイメージして読み進んでください)

 

 

 

 

24歳 大学院卒 大企業勤務

 

ほう。

 

 

 

 

 

タップして自己紹介欄を詳しく見ると

 

 

 

大学院卒(慶應)

大手自動車メーカー勤務

最近、豊田市に引っ越してきました。

 

 

 

となっていた。

で、で、でた〜〜!!!!

噂の!慶應ボーイ!!!!

(慶應ボーイてお前いくつだよ)

 

 

 

 

東京の、日本の私立大学最高峰の学生の中にいた男。

企業売上全国1位、

日本が誇る世界的企業  某自動車メーカーに勤める

ホストみたいな外見の男。

 

 

 

 なんかおもしろそーじゃん?

 

 

 

 

さっそく いいねありがとう を押した。

 

 

 

 

 

そこからメッセージのやりとりをして、

LINEを交換して、通話もして、

満を持しての決戦はGWに決まった。

 

 

 

 

 

今思えば、会う前から

彼はとてもつまらない男だった。

 

 

 

通話をすれば

 

自分語り、仕事自慢、慶應自慢、友達自慢。

東京が好きだから帰りたい、

名古屋なんてつまらない。

 

 

案の定、スーパーナルシスト。

通勤中に自撮りを撮って送ってくる、そういう男。

 

 

私のちょっとした言動に対しても

可愛い可愛いと連呼するし

好きとか簡単に言うし

しまいには会ってもない女に付き合おうとか言いだす始末。

 

 

 

 

遊ばれてるんだ、とおもった。

当時の私はそう思った。

 

慶應卒の○○自動車の新入社員に遊ばれる。

 

 

そんなのはごめんだった、反面、

付き合ったら自慢になる?

というなんともしょうもない気持ちもあった。

 

 

 

 

 

 

 

ともかく決戦はGW、

食われるくらいなら食ってやる。

そんな心意気で挑んだ、初めてのアポイント。

 

 

 

 

 

 

 

GW某日、名古屋駅

 

 

無難に金時計で待ち合わせ。

市内で単発のイベントスタッフのアルバイト後だった私は

白シャツに黒スキニーというハイパーやる気のない恰好だった。

服を持ってきて着替えることも出来たけど、

やる気満々、全力で挑んでるなんて思われたくなかった。

私はまだ20歳、売れ残りのおばさんじゃない。焦ってなんかない。

 

 

 

 

  

 

pairsのプロフ画は金髪だったけど

社会人だから既に黒髪なことは分かっていた、

送られてきた自撮りも黒髪だったから。

 

ちょっと不細工な黒髪の手越祐也をイメージして待っていた。

 

 

 

 一般人にしてはそこそこのイケメンが来るはず

そう思っていた、のに、、

 

 

 

 

数分後、待ち合わせ場所に現れたのは、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

www.instagram.com

 

 

 

 

\\NON STYLE 井上//

 

 

 

 

 

 

いやいやいやいやいや、、、

ちょっと待て。

 

 

 

 

 

 

確かにちょっと不細工な手越だった。

pairsの写真だけでなく、

送られてきた自撮りも、

LINEのプロフィール画像

過去のプロフィール画像

 

 

ぜーーーんぶ不細工な手越祐也だった。

 

 

 

 

 

 

 

なのに、いま、私の目の前にいる男は

どっからどう見ても、NON STYLE 井上だ。

 

 

 

詐欺にもほどがある。

 

 

一気にやる気のなくなった私。

ノンスタ井上がツボ過ぎた私。

 

 

合流後3秒で帰るなんて言えず、

 

 

「いこっか」

と笑顔で言う彼に無言でついていくしかなかった。

 

 

 

 

 

「なにたべたい~?」

なんて聞かれても、井上すぎるその顔を見て

吹き出しそうになるのを堪えるのに必死だし、

そもそも食べ物に関心がないので、なんだってよかった。

 

 

この360°どこから見てもNON STYLE井上な男が

文明の利器の力で自撮りなら手越祐也になれる

という現実をどうしても友達に伝えたい。

いや、見せたい、、、。

 

男の人が女の人の詐欺写真に騙されるのはよく聞くが

まさか、女である私が、騙されるなんて。

しかも顔半分隠してたとか、SNOWの動物だったとかでなく。

お前はガラケー時代のギャルかよ、、。

 

 

 

 

そんなことばかり考えていたら

気づいたら店内にいた。

 

 

 

www.hotpepper.jp

 

 

 

 

 

え、しゃぶしゃぶって、、、

 

ま じ か ! 

 

 

私は決して潔癖症というわけではないけれど

 

ノンスタ井上と同じ鍋をつつくのは

ちょっと、いやかなり無理だった。

 

 

 

 

正直、ここからはあまり思い出したくない。

 

 

 

箸の持ち方が汚かった。

お皿を綺麗に持てなかった。

お肉や野菜の入れ方が雑だった。

などなど、、

 

ガサツさが随所で垣間見えた。

 

 

 

 

慶應なのに、育ち悪いのかな、、

なんて思っていたら

なんと出身は福岡で大学から慶應だった。

 

 

おいおい、要はメッキかよww

(名古屋ネタです。金城学院というお嬢様学校があり、

中学からの子を純金、大学からの子をメッキと呼ぶんです。)

 

 

 

 

 

 

 

 

そうそう、話はズレるが

食事の仕方が汚い男は

本当にやめたほうがいい。

 

これは私の抱かれてもいいかどうかの一つの判断基準なのだが

食べてる姿を不快に思う男とは

もっというならば、

一緒に食事をしてなにか違和感を覚えるのなら、

その男とは寝ないほうがいい。

ほぼ確実に、生理的な部分の相性が悪い。

 

私は、ご飯をかけこむように食べたり

ポロポロこぼしたり、早食いしたり、

そういう男とは絶対に寝ない。

そういう男はだいたいセックスも

雑でせっかちで自分本位だと思う。

 

どうせするなら

丁寧にゆっくりいいムードな中で

ロマンチックに、行為に及びたいのに

こういう男はだいたい途中でムードをぶち壊す。

ならいっそ黙っててくれ、と言いたくなるくらいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事中の会話はほとんどが

仕事の話か大学時代の話。

 

 

どうやら慶應生のPCはMac率100%らしい。(心底どうでもいい)

でも話を聞いているうちに、

どうやら学生時代住んでいたのは、横浜、、、

そう、三田キャンではなく

 

 

 SFC(湘南藤沢キャンパス)

 

 

 

金髪の有村架純が話題になった

ビリギャル で全国に広く知れ渡ることとなったあれ。

誰でも入れる、慶應ではないとまで言われた あのSFCだった。

 

 

 

 

なんだよ、SFCかよ。

ここで私のやる気メーターはゼロになった。

 

 

 

慶應だったって偉そうにしてるから

どんなものかと思えばSFCだし、

三田キャンじゃないんかーい。

しかもなんなら内部でもないから

親が特別スーパーお金持ちってわけでもない。

 

 

 

 

 

え?なにこれ、全然面白くないんだけど?

私の求めてた面白さ皆無なんだけど?

 

 

 

東日本大震災の時、計画停電になってる中

大臣が住んでる地域に住んでたから

停電にならなかったんだって。

 

へーーーーーーー。で?

 

 

 

 

好奇心が全然満たされない。

私が出会ってみたかったのは

こんな男じゃない。

 

 

 

 

 

 つまんない

 

 かえりたい

 

 つまんない

 

 

 

 

 

 

 

箸の進まない私。

対して、楽しそうな男。

早く食べ終わらないかなーと思っていた。

 

といっても別に食べ放題ではないので

簡単になくなる。

 

 

それでも話が長引くかと思ったら

意外とあっさり会計に向かった。

  

 

 

なんだよ~、意外と空気読めるタイプ?

 

 

 

 

お会計も済ましていただいて

(勿論、向こうもち、いやだって私、学生だよ?w )

 

 

 

私「ありがとうございます、ごちそうさまです。」

 

男「いいよいいよ~

  どうする?これからドライブでも行く??」

 

私「え、、。」

 

男(満面の笑み)

 

私「明日もバイトで朝早いんで帰ろ

 

男「え!?!???!!せっかくわざわざ車で来たのに!?!」

 

私「ごめんなさい、でも明日も5時起きで(大嘘)」

 

男「そっか、、、じゃぁ仕方ないね、、」

 

 

 

 

そうして私たちは

セントラルタワーズ13階から

エスカレーターで1階までおりた。

 

 

 

今しかない、そう思った。

 

幸か不幸か、彼は私の嘘を信じていて

私の前でこちらを向いてエスカレーターに乗って

笑顔で話し続けている。

とても鈍感なようで

もう二度と会うことはない なんて思ってないらしい。

 

高さは私のほうが1段上。

iPhoneをチェックする高さで

自然に隠し撮りできる! 

 

 

絶対に気づかれずに

ベスト井上ショットを手に入れる。

それだけに神経を研ぎ澄ませた。

 

ツーショットなんて頼もうものなら

全力で盛ろうとしてくるだろう、

それでは意味がない。

 

今日の私の衝撃を友達と共有するためには、

絶対に、ノンスタ井上でないといけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

男「ねぇ?聞いてる?」

 

私「えっ?きいてるよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 セーーーーフ。

 

何とか気づかれることなく

ベスト井上ショットを手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

男「あー、今日暇になっちゃったなー」

 

私「ほんとごめんなさい、、(まじめんどいな)

  私こっちなんで。今日はありがとうございました。」

 

男「いえいえ、こちらこそ~、また今度はゆっくり遊ぼうね!明日がんばってね。」

 

私「はい。」

 

 

いうまでもなく

この“はい”は、明日がんばってね に対する返事であって

もう二度と会うことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

無事手に入れたベスト井上ショットと

LINEのプロフィール画像のスクショを

友達に送りながら電車に揺られ帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 pairsって思ったよりつまんないのね。

それからしばらくして、私はアプリを退会した。

 

 

 

 

 

 

けれども私の冒険はまだはじまったばかり、

今後、好奇心の赴くままに

さまざまな世界に迷い込むことになる。

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

 

Tinderアポ@金山

 

 

 

 

 

 

 

金曜21時

普段なら口もきかないような男を前に

国産とは到底思えない肉が焼かれるところを

得意の営業スマイルで眺めていた。

 

 

 

 

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そもそもの事件の発端は3時間前に遡る。

 

 

家で華金の夜の街へ出る準備をしていた私に

届いた1通のLINE↓

 

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は?

 

 

 

 

そっかそっか〜、車で行くか〜、

お酒飲まないのかな〜

 

なんてなるわけがない。

 

 

 

 

tinderのトーク履歴を遡った。

こいつ、飲みに行こうって言ってたよな???

 

 

 

 

 

ここで1つの仮説が浮かんだ。

 

本当にただ

車で行くからお酒は飲めないけどごめんね

と伝えたかった可能性もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って、そんなわけがあるか。

 

 

 

 

 

 

とはいえ既にフルメイクで髪の毛も巻き終えた。

肌と髪にこんなにダメージを与えたのに

どこへ出かけることもなく家に引きこもる華金を許せるはずもなく。。

 

 

 

“え、車なんですか、、?”

 

 

と純粋無垢な箱入り娘のような返信をした。

 

 

すると案の定、想定してた通りの返信が…

 

 

 

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はい、もう勘弁してください。

 

 

 

 

 

 

この時代に生きてて

知らない人の運転する車に乗るなんて

小学生でもしない。

学校で習ったでしょ?

 

 

《知らない人にはついていかない》

 

 

 

 

ましてや出合い系アプリで出会った人。

軽率に車に乗るわけがないでしょう。

なんならタクシーだって嫌だ。

 

 

 

 

すると電話がかかってきた。

 

 

 

 

男「ごめんねー、急に夜予定できちゃって〜

 

私「あ、はい、、(そんな遅くまで一緒にいるつもりないわ)

 

男「車ダメって、アレ、、?怖い的な?

 

私「あ、そうですね、、(それ以外あるかよ)

 

男「そっかー、んー、どうしようなー、

 

私 (やべえめんどくせえ)

 

男「八事はいやー?

 

私「遠いですねー(お前それ絶対家の近くだろ)

 

男「どこだったらいいのー?JR沿い?鶴舞とかは?

 

私「えー微妙ですねー

(鶴舞って公園と大学以外なんもなくない?)

 

男「どこらへんならいいの?

 

私「名駅とか栄とか金山あたりで、、

 

男「伏見は?

 

私「あー、いいですよー(早よ決めろや)

 

男「んーーー、あー、でもやっぱ金山で!

 

私「わかりましたー!(なんなんだよ)

 

 

 

 

 

ここで私の中で1つの疑問が生じた。

 

 

なに基準で駅を選んでるの?

 

 

 

 

 

名古屋民ならわかるだろうが

名古屋はとてもとてもコンパクトな街だ。

基本的に名古屋駅、栄が街の中心で

そこに行けばすべての用事が済むと言っても過言ではない。

東京駅と銀座、くらいの距離感。

そこから少し外れると急に静かになる。

名古屋駅と栄駅の間にある伏見駅のHUBでさえ

週末の閉店時間は25時。

(よく言われることだが基本的に名古屋の夜は早い、

みんなお家が大好きなのか街中から人が消えるのが早い。)

 

つまり、わざわざ行きたい店がない限り

基本的に栄か名古屋駅付近集合が鉄板。

 

なのに、なのにだ、

彼が出した地名は、

「金山、八事、鶴舞、伏見」

 

 

金山はJR名鉄地下鉄が揃うのでまだわかる。

八事なんてもはや高級住宅街だし

鶴舞は公園だし伏見は御園座オフィスビルの街。

 

 

伏見や鶴舞なら栄で十分だし

金山なら名駅とほぼかわらないし

八事はもはや理解不能。 

 

 

わたしはこの4つの土地の共通点を考えながら

電車で金山に向かった。

 

 

 

 

 

 

20時前金山駅 アスナル金山前で待ち合わせ。

 

 

 

実は私は相手の顔を知らない。

tinderでは首から下の写真だった。

なのになぜ会う気になったか?

それは

 

医師

 

この二文字にのみ支えられて彼は私に会えたわけだ。

(あとはタイミングと気まぐれ)

 

 

 

どんな人が来るかわからない、

この恐怖は毎度毎度直前で嫌になる。

が、しばらくするとまた欲しくなる。

ジェットコースターと一緒。

 

 

 

アスナル金山で一番目立つ場所、

マツキヨが見える少し離れた場所で私は待つことにした。

 

 

 

 

待つこと5分、

マツキヨ前で無事(?)男と合流した。

 

 

 

感想

え、ちっさ、、、

 

 

それはもう衝撃的な小ささだった。

(若干太っているので余計小さくみえた。)

 

 

その日の、私はEMODAの厚底の靴を履いていた。

 

 

 

身長161cm+ヒール13cm=174cm

163cmの男を完全に見下ろしていた。

 

 

 

 

男「思ってたより大きい、、。モデルとかしてる?

 

はいでた~~!!!!

 

モデルとかしてる?

この発言をした男に未だかつて抱かれたことはない。

それくらい(わたし的)モテない男の発言だ。

 

 

 

 

合流して3秒でトイレに行く男

 

カルメギサル 2人前のみでサイドメニューを頼まない男 

 

車だから飲まないといいつつ抜けるから大丈夫と酒を飲む男

 

馬鹿みたいに、育ちがよさそう、モテそう、、と褒めてくる男

 

もしかして○○大?と偏差値42の大学を出してくる男 

 

 

 

全てがありえなかった。

 

 

トイレくらい先に行っとけよって話だし

女の子は色んなものをちょっとずつが大好きだし

焼けるまでにつまめるものないと悪酔いするし

飲酒運転とかほんと頭悪い人のすることだし

褒めるばっかでユーモアのあることは一つも言えないし

バチバチに頭悪い女として見下してくるし

顔面偏差値 48だし

 

 

 

まじで勘弁してくれ(本日2回目)

 

 

 

それでも私は絶対に営業スマイルを崩さなかったし

なんなら男に気を許してるフリをした。

 

相手は社会人、しかも医者、

おそらく大学病院ではないからそこそこ持ってるはずだ。

 

 

絶対に1円も払いたくないし払うつもりもない。

 

 

 

 

 

男「次いこうか。

 

そういって会計へ向かう男を横目に

無駄にゆっくりとライダースを羽織り

ゆっくりとレジへ向かった。

 

 

クレジットカードを店員に渡す姿を確認してから近づいた。

 

 

「あ~、飴だ~!!!

 

正直飴になんて1mmも興味ないが

無邪気に好きな味を探すふりをした。

 

 

店外へ出てから一言

 

「あ、なんかごめんなさい、、

 ありがとうございます。」

 

と財布をだす素振りなどせずに言えば全て片付くことを知っているから。

今日もしっかりと知り合いのママに昔教えてもらった技を使わせてもらった。

 残念ながらあなたはお客さんレベルです。

 

 

男「もう1軒行こう

 

話すことなんて何もなかったが

まだ帰りたい時間より早かったのでついて行くことにした。

 

 

 

アスナル金山を背に大津通に出て

金山橋を渡り歩くこと3分、

なんとなくしていた嫌な予感はあたった。

 

大津通を渡った、先に見える、ネオン。

減っていく飲食店。

 

行きつけの隠れ家BARがきっとある、そう信じたかった。

が、そんなわけがなかった。

 

 

 

 

ナメられてる

 

 

 

 

私が土地勘がなかったから目の前までこれたが、 

そんな簡単に抱けると思われちゃ困る。

 

 

そもそもなぜイケると、思ったのか。

 

確かに私はお酒が弱い、というよりシンプルに顔に出やすい。普段から周りにもうやめときなと止められるくらいすぐに赤くなる。だが昔派手に遊んでた頃は、一晩で何十本ものシャンパンを直瓶イッキしていた。たかがグラスワイン1杯でガードが緩くなるわけがない。

ちょっと酔っててニコニコ話をしてたらイケると思ったの?

 

 

 

 ホテルの前に着き、立ち止まった男に

 

 

「それはないから」

 

 

 と真顔で言うと、

「手厳しいな~~」

と笑っていた。

 

 

私が厳しいのではなく、お前がぬるいだけだろ。

 

という台詞は心の中にしまっておいた。 

 

 

「じゃあ普通に飲みに行く?

 

 

と言われたが、一気にガン萎えしたので

明日朝早いから帰る と言って断った。

 

 

 

その後、地下鉄出口までの間、

男は自分の明日の予定の話や

私の予定を聞いてきたりしたが

一つも興味はないし適当に流した。

また予定があったら飲みに行こうと言われたが

予定を合わせるつもりはないし、

地下鉄への階段を降りるとき後ろから声がしたけど

振り返ることもなかった。

 

 

 

 

そんなことよりも、私は気になっていたことの答えを見つけた気がして、答え合わせをしたくてたまらなかった。

 

 

 

 

そう、

 

 

なに基準で駅を選んでいたか

 

 

 

 

 

八事はおそらく自宅付近。

それは最初から検討がついていた。

残るは、金山、伏見、鶴舞

 

 

私はGoogleMapを開き

《ラブホテル》で検索した。

 

 

すると、、、

 

金山も伏見も鶴舞

駅から半径数百メートル以内にホテルがあった。

 

 

 

そう、つまり彼は最初からその気しかなかったわけだ。もしかしたら、いわゆるネトナンというやつをしているのかもしれない。本人にネトナン師という自覚があるかは定かではないが、少なくとも、ネットで出会って即を目指す という部分ではネトナンに数えていいのか、その辺は専門家の意見を仰ぐとして。。

 

 

 

 

高校生の頃から出会い系に手を出し

通っていた予備校のバイトの大学生と付き合い

暇な女子大生がバズる前からマッチングアプリで暇を潰し

名古屋の街でナンパ師に 警察呼ぶよ?と脅す

このわたしがそんなに簡単に

顔面偏差値48に即れると思われたなんて。

 

 

 

 

 

心外すぎて笑えてきた。

 

 

 

 

 

 

わたしの経歴を詐称して話したから?

純粋なお嬢さまのフリをしたから?

 

 

 

 

 

 

まだまだ、色恋マスターへの道は程遠いようだ。